薄暗い林道 「◯◯に注意!」
恐る恐る侵入したその道は、がれきの急勾配で、オフロードバイクと言えどもかなり走りにくい悪路であった。おまけに左手は谷川が口を開いているので、うかつな走りはできない。慎重に登る。行き止まりと知りつつ。
地図の記載に違わず、進むほどに道は細くなり、勾配も厳しくなっていった。まだ陽は高いのに鬱蒼とした路面は山水でじくじくしている。何が出て来るか分からない、△△か、◯◯か!
退屈の対義語は、コワサかもしれない。思い出してみると、楽しかった旅というものは、どこかにそういうドキドキ感が伴っていた。安心だけの旅は記憶に残りにくいのだ。
退屈でもいけない、恐すぎてもいけない。人はいつも「ちょうどいいコワサ」を求め、それを心のエサとして生きている。
これ以上は無理!というところまで登り、ささやかな満足感と共に登り口まで引き返して来た。ゲートの貼り紙をよく見ると「クマに注意!」と書かれていた。
林道では下の写真(2008年京北町林道八丁線にて撮影)のように、倒木に行く手を阻まれることがある。誰もいない林道の奥でこういう光景にいきなり出くわすとギョッとして鳥肌が立つ。自然の底知れぬ力を感じるからだ。ある意味、クマより恐ろしい。(この時はすごすごと引き返した。)