京都府立植物園の中にひっそりとある神社のこと~半木神社(なからぎじんじゃ)~

 世界遺産の点在する京都市内ですが、北区の上賀茂神社と、左京区下鴨神社のほぼ中間地点、植物園の敷地の中に「半木神社(なからぎじんじゃ)」という小さなお宮さんがあることをご存知でしょうか。

 

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古地図を見ると、このあたり一帯はほぼすべてが農地なのですが、上賀茂神社下鴨神社の中間に、もうひとつ祠(ほこら)が描かれています。これが半木神社であり、おそらく、農道の途中の鎮守の森の中にポツンとあったのではないかと思われます。大正時代末に京都府立植物園が開設されましたが、それ以前のことになります。

 

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  〈現在の上賀茂神社 下鴨神社 府立植物園の様子〉

 

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   〈江戸時代の上賀茂~下鴨の地図〉

    左上が上賀茂神社 右下が下鴨神社

    その中間地点の農道の小さな茂みが半木神社の森

 

 

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 境内に掲げられた表示板によると

「この土地はその昔、賀茂族が開墾した土地であるが、奈良時代には「錦部の里」と呼ばれていた。そのわけは、古来、養蚕製糸が営まれ、絹織物の生産が盛んであったためである。平安時代に入り、後一条天皇の御代、寛仁二年(西暦1018年)に、賀茂別雷神社社領地として朝廷より正式に錦部郷の名をもって寄進された。」とあります。

 

そして驚くことに、

「賀茂族と秦族の人々が、その職業の守護神として、四国の阿波国より天太玉命(あまのふとだまのみこと)を勧進鎮祭した。」つまり、今の徳島県から養蚕業の守護を願って神様においで頂いたというのです。なぜここで阿波の神様なのでしょう。ちゃんと調べてみたい衝動にかられます。これは民俗学の領域なのでしょうか。

 

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 祠の周囲は鬱蒼とした手つかずの林に包まれています。神の森として保存されてきた、園内で唯一の自然林なのです。町中の植物園、その中の一角に小さな〈古代〉を感じます。

 

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石田鍼灸 京都北山