建築家 安藤忠雄氏講演会と、その後に偶然迷い込んだ安藤氏行きつけのおでん屋さん

 去る6月12日(火)の夕刻、芦屋で鍼灸院を開業している友人Y氏に誘われて梅田駅前の大阪工業大学安藤忠雄氏の講演会に出かけた。講演会のテーマは「挑戦」。自分自身の価値を上げるために何をなすべきか、である。

 

 私はこの方の特別熱心なファンというわけではなく、業績の詳細まではよく存知上げなかったのだが、才能、努力、発想、行動、人脈、すべての方面において常人の域を超えた人のお話は、たとえそれが雑談であっても足を運んで拝聴する価値があると考えた。そのため、当日の夜診は休診にして出かけた。

 

 安藤氏は、「いざとなったら助け合うこと」という理念のもとに、2011年6月から「日本2011宮城 遺児育英資金」を各界の著名人と共に立ち上げ、現在その総額が46億円に達しているとのことである。また、現在は北浜の東洋陶磁美術館の横に、「こども図書館」を建設中で、「本を読む子どもづくり」を目指しておられる。時代の先を読み、実際に行動に移すことのできるたぐいまれな人物である。

 

 いささか抽象的で断片的なものではあるが、当日のメモから抜粋して、以下に語録として残しておきたい。

 

〇これからは自分の力を信じて生きていく時代。常に自分でアンテナを張っていなければならない。

 

〇夢があれば生きていける。生きているという誇りを持つこと。

 

〇75歳まで働き、95歳まで生きるための知的体力と肉体的体力とを保つこと。いつでも青春であるために。

 

〇自分で先を考えて生きていくこと。

 

〇日本人のよいところは、世界で最も感性が高いこと。これは春夏秋冬という四季の移り変わりの中で磨かれたもの。

 

〇日本の建築技術は世界一、値段も世界一。

 

〇上がいいと言ったら、下も従う国民性。これからはこれではいかん。

 

〇「美術館の島を作りたい」と言った福武總一郎氏の発想力と持続力が、ついに今の直島を作り上げた。昔の経営者は情熱的だった。

 

〇直島では、今後値段が必ず上がって行く作品を発掘して購入し、展示する。できればタダで入手する。例として、かつて300万円で購入し、展示されている草間弥生のかぼちゃの巨大オブジェは、現在1億3000万円になっている。

 

〇自分に

   学歴がなかったら、考える

   体力がなかったら、考える

   お金がなかったら、考える

 

〇できるかなぁ、と思ったことができると、達成感がある。

 

〇降りかかってくる問題を希望と夢で乗り越える。それが何かと考えると、新しい道が開けてくる。

 

  超ポジティブな安藤氏の人間性に圧倒されつつ、会場を後にする。とても76歳とは思えない圧倒的な迫力であった。これだけでも来た甲斐があったというものだ。友人Y氏は会場で買った本にサインをしてもらっていた。

 

 

というわけで、

大盛況の内に講演会は終了し、食通の友人Yさんに促されるまま、10分ほど歩いてたどり着いたのは、老舗のおでん屋さん「かんさいだき 常夜燈」。Yさん曰く、「一度行きたいと、ずーっと前から思ってたお店なんですよ。」

f:id:tacoharumaki:20180623165030j:plain

 

 御歳86になられる上品な大将お一人と、お弟子さんお一人でやっておられる。どちらも穏やかなにこやか柔らかなお人柄で、私たちのような初めての客でもホッとする。

 

 店内に掲げられた大きな写真パネルには、常連の人たちが写っている。その中には有名な政治家たちと共に、なんと先ほどの安藤氏も写っている。聞けば、氏のオフィスはこの町内だとか。何という偶然。誘ったYさんもこのことは知らなかったそうだ。

 

 また、一般的におでんを「関東炊き」というが、その昔この店を訪れたある大人物が「これは関東炊きではない、関西炊きと名付けよう」と言い、それがこのお店のサブタイトルになったという。その人物とは、あの森繁久弥氏であり、氏の筆による揮毫の書が額に入れられて高い場所に掲げられていた。

 

 メニューは「おでんセット¥4,000」の一種類のみ。非常に分かりやすい。

そして、大鍋に運ばれてきたおでんの汁はなんと濃い味噌の色をしていた。

f:id:tacoharumaki:20180623170805j:plain

 ほとんどの具がこのお店の手作りであるとのこと。とても手間暇かけて作られている。今までのイメージからは想像できない芳醇なおでんを、当店ブランドの日本酒とともに味わう。

f:id:tacoharumaki:20180623171027j:plain

 

 更に驚いたことのは、このお店がマンガ『美味しんぼ』第79巻で取り上げられた「名店」であるということ。店内にはそのことを来店した客に知らせるパネルと共に、作者・雁屋哲氏の手による正真正銘の原画が飾られていた。

 

f:id:tacoharumaki:20180623171850j:plain

f:id:tacoharumaki:20180623171926j:plain

このお店の唯一の後継者であるお弟子さんから、このお店にまつわる色々なお話を聞かせて頂き、ゆっくり食事を楽しませて頂いた。また日を置いて再訪したいと思います。ごちそうさまでした。

 

今日は偶然にも安藤忠雄先生'S デーであった。帰途、やや遠回りして、コンクリート打ちっぱなしの氏のオフィスビルを見学してから駅へ向かい、Yさんに礼を述べてお別れする。 

 

(なんとYさんは、「奥さんへのお土産に」とおでんの持ち帰りを持たせてくれたのでした。細やかなお心遣い、ありがとうございます。 )