林道の行き止まりで、珍しいニホントビナナフシに出会う
多くの林道が車両通行止めとなったこの半島でも、まだ一部走行可能な裏道が残されている。春に続き、その探索の二回目である。
今回も目の付けどころは、スカイラインにつながっている(ように見える)一般道が実際にはどうなっているのか、である。有料道路にもかかわらず、なんらかの事情で外部とつながったままになっている不思議な裏道がいくつか存在している。
出入りが厳格なはずの有料道路にこのように奇妙な道がつながっている、そのユルさが面白い。観光客が絶対に訪れないみちである。「径」という字を充てたくなる。実に他愛のない道楽である。
中伊豆の冷川から少し西へ行ったところに「伊豆平パールタウン」という別荘地がある。昭和の頃に紀州鉄道がスカイラインに近い山を開発して作った静かな「タウン」である。
この青い標識から左へ坂を登るとその「タウン」がある。
人の姿は見えず、ただ広い空と紅葉が出迎えてくれた。昭和の時間の続きがそのまま流れている。
さて、Google Mapを見ると、この街からスカイラインに向かって数本の道がつながっているようにみえる。地元の人が使う農作業や林業の道であろう。
とにかく行ってみる。
誰もいない。
しばらく行くと…なんと雑木林の中で道が終わっていた。Google Mapにはスカイラインにつながる道が書かれているのに。
その先がどうなっているのか知りたくて、バイクは置いて歩いてみることにする。
伊豆には熊がいないのでその点は安心だが、一つ心しておかねばならないのはハンターに獲物に間違えられないようにすること。
けものみちのような所をしばらく下って行くと、
なるほど、地図にある簡易舗装路に合流。
更に下って行くと、
立派な竹林を抜けて行くと…
スカイラインにつながっていた!
なるほどと納得し、汗びっしょりになってバイクの所まで戻ることにする。
かつては石仏だったのか?苔むした路傍の石。
バイクまで戻り、誰もいない林道の行き止まりで休息を取る。
さわさわと木立が鳴る音だけが聞こえる。
夏ならクワガタムシがいそうなクヌギの木の股を何気なく覗きこんでみると、に何か緑色をした虫が横たわっている。初めは冬を迎えて今まさに死にゆくカマキリだと思った。しかし、カマがない。翅もない。なんだこれは。見たことのない虫である。
頭部が独立していて、まるで妖精のようだ。
木の葉で脚をつついてみるとわずかに動いたが、脚の曲がり方から死は近い。それを待つかのように、一匹の大きなヤマアリが周りを歩き回っていた。
林道の行きどまりで一匹の珍しい昆虫の臨終に立ち会ったわけだ。
帰宅後に調べてみると、ニホントビナナフシという虫だと分かった。ナナフシの中では珍しい種類なのだそうだ。
冬木立死にゆく虫の膂力かな
伊豆の魅力はこの何もない感じだ。