痛みについて考える~鎮痛剤で痛みをおさえ込むことのメリット・デメリット~

 

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膝関節そのものの障害か、そうでないかを見分けることが大切


 一般の医療機関で痛みを「治療」する場合、鎮痛剤が処方され「様子を見て下さい」となることがよくあります。各種検査・画像診断等の現代医学的診察で重篤な器質的欠陥が見つからない場合です。

 しかし、期待通りに治癒に向かわず、むしろ悪化させてしまうケースもあります。そういったこじれた患者さんが鍼灸を頼りに来院されることが少なくありません。

 先日もある七十代の膝痛でお困りという患者さんがおいでになりました。病院でもらった鎮痛剤で一ヶ月間頑張ったがどうにも良くならない、鍼灸で何とかなりませんか、とのことでした。

 初診時に診せて頂いたところ、右の膝がパンパンに腫れあがって、熱を持っていました。右足は患部だけでなく、つま先まで熱くなっていました。ちょうど家電用品のモーターが熱くなるような感じです。患者さんのお話では、「レントゲン的に膝に損傷が無かったので鎮痛剤の処方となった」ということでした。

 この方は走ることが趣味で、何十年も毎日欠かさず川原を走っておられます。鎮痛剤で痛みを一時的に弱めたことでこの日課をなんとかこなすことができていたのですが、薬物により痛みを弱めることで無理ができてしまった結果、かえって症状を悪化させてしまったと考えられます。

 この方のようにこじれてしまうと、治癒には鍼灸でも最低一ヶ月はかかると予想していましたが、週2~3回の頻度で治療したところ、運よく9回の施術でほぼよくなりました。

 私の診察の結果、膝関節自体の問題ではなく、腰から太ももへかけての神経的な調節不良(坐骨神経・大腿神経)が原因でした。もう少し早く受診されていれば治癒も更に早かっただろうと思われます。

 鎮痛剤だけで治ってゆく場合もあるでしょうが、それは鎮痛薬が治したのではなく、鎮痛剤が効いている間に自然治癒力が病の勢いに勝ったのです。そのことをよく理解していなくてはなりません。特にこの方のように無理しがちな人の場合は病勢に負けてこじれてしまうのです。

 鎮痛剤は一時的に痛みを和らげるのが目的で、本当の治癒に向かわせるのはあくまでも人体の持っている力なのです。鍼灸はそのお手伝いをするのに有効な方法です。

 石田鍼灸 京都北山 (ishidashinkyu.net)