古墳探索 in 福岡(過去の探索を振り返りつつ)
(前回の続き)今回九州へバイクを乗り入れた目的、それは研修旅の余暇に小さな古墳や遺跡を巡ることでした。この密かな楽しみはコロナ直前2020年正月明けの「近江・雪野山古墳単独登山」に始まり、その春の「愛知・静岡古墳探訪ソロツーリング」へとつながりました。
後者では名古屋郊外の志段味(しだみ)古墳群から始まり、浜松、静岡、沼津まで十数基の古墳を巡ることができたのでしたが、そのいくつかは小山の頂にありプチ登山を兼ねていました。巨石を山頂にまで運び上げた古人の労苦に思いをはせ、そこでしばしの時間を過ごす、何かを納得して下山する。この繰り返しが何故か楽しいのです。他人にはあまり理解されません。
その後も近県での小規模古墳の探索を重ね、中には単に「名前が変」という理由だけでわざわざ訪ねた古墳もありました。三重県津市の山里にある「ガガフタ古墳群」などがそれです。名前からしていかにも妖しい感があります。この時はバイク仲間T君も一緒で、彼は古墳などには関心を持ってはいませんでしたが、私の風変りな趣味に快く付き合ってくれたのでした。
グーグルマップに記載があるものの、現地へ行っても看板一つ出ていません。ガソリンスタンドで尋ねてみても首をかしげられるばかり。運よく、グーグルに投稿された古墳の画像の背後に竹藪が映っていたのを手掛かりに周囲を探すと確かに山の裾野にそれらしき場所があります。ハーレーの友人は放置し、独りずんずん竹藪へ入って行きました。
ライダーブーツのまま勾配のある斜面をしばらく歩き回ると、果たして巨石の建造物が眼前に現出しました。この「遂に探り当てた瞬間」が最高なのです。ですから教科書に出てくるような超巨大古墳よりも名も無き塚のようなものの方が断然楽しいのです!
さて、昨秋の九州でも同様に、早朝に新門司フェリーターミナルより上陸の後、福岡県北部を中心に、20基ほどの小古墳や弥生遺跡、付属博物館、大宰府政庁跡、大宰府天満宮、旧伊藤伝右衛門邸(歌人伊藤白蓮の夫、筑豊の炭鉱王の大邸宅)などを二日間で一気に駆け巡ることができました。ヤマハセローの機動力のお陰です。
中にはあまり多くの墳墓が広域に散在しており、その全貌の不明な「古墳群」もありましたし、逆に「古墳群」といいながら一基しか見当たらないようなものもありました。古墳に隣接する展示施設では、学芸員の方より熱心に説明を受けることもあり、とても有意義な時間を過ごすことができました。事前に少し勉強して臨むと、学芸員さんにも喜ばれ、ますますご説明に熱が入ります。
九州の古墳はその内部に描かれた極彩色の絵画が特徴的です。石室の壁に大胆な配色で描かれた絵画は時代的にはそれほどの隔たりが無いにもかかわらず、飛鳥の高松塚古墳のそれとはまるで異なり、写実性を排除した派手な幾何学模様です。仏教移入以前の日本人の美意識とは一体…???などと考えるのもまた楽しいものです。黄泉の国へ旅立つ者を寂しがらせないように飾り立てたのかもしれません。石室へつながる細長い通路の意匠はあたかも産道のようで、胎内への回帰をも連想させます。