大発見?!「イパネマの娘」のサビのコード進行の秘密

  「馬鹿げたことをやりましょう。優しく生きましょう。人生にはその他のために使う時間なんてないのですから。」(キアヌ・リーヴス

 昨年ついにライブハウスやジャズクラブでのジャムセッションにデビューしました。まさに清水の舞台から飛び降りる気持ちでした。半年以上経った今でもそれは変わりません。準備して行っても思うように演奏できることはほとんどありません。それでもいいと思って失敗してもまた行きます。前回の失敗を取り戻すためにも行かねばなりません。しかし取り戻すこともままなりません。

 今年初めての某所でのセッションではアントニオ・カルロス・ジョビンの最も有名な曲の一つ「イパネマの娘」にチャレンジしました。メロディーは鍵盤ハーモニカの人にお任せし、自分はイントロとコンピング(伴奏)、アドリブソロ、エンディングにまさに「心血を注ぎ」ました。

三年前に一度読んだ妹さんによる伝記を再度借りる

 この曲は以前にも演って失敗しています。「いけるでしょ、やってみれば」とホストベーシストの方に言ってもらったのでつい。当たり前ですが、練習不足でいきなり一か八かで演ってもろくな結果は出ません。「その日やる曲は直前まで練習しておかないとダメなんだ」という学びを得ました。

 前回の失敗を教訓に、サビのコード進行をおさらいし、使えるスケールと学習済みのフレーズも再度研究して臨みました。そのおかげで大きくスベることはありませんでした。しかし何かモヤモヤが残りました。それは変則的とされるサビの部分の特徴的なコード進行に合うように、ソロを「仕込んで」行ったからです。 

 翌日になってもどうしたらもっとシンプルに考えてアドリブに持っていけるのか?考えました。一人で考えていても仕方がないのでネットで質問してみたりもしました。その中のレスポンスの一つに「サビはメロディー(主旋律)が4小節×3セットで平行移動している」「各々の後半の7thコードも平行移動している」というものがありました。確かにそれはその通りです。

①F#△7/ 〃 / B7(#11)/ 〃 /

②F#m7/ 〃 / D7(#11)/ 〃 /

③Gm7/ 〃 / E♭7(#11)/ 〃 /

①➡②は短3度上がっています。

②➡③は半音上がっています。

メロディーもこのまったく同じ音程で平行して上がっています。つまり①②③は主旋律もコード進行(後半)もほぼ相似形で出来ているのです。

 問題は前半のコード進行です。これが「とても変則的」とされ、プロの人でも「昔、苦労してやって覚えた」と言われていたほどです。

F#△7/ 〃 / B7(#11)/ 〃 /

F#m7/ 〃 / D7(#11)/ 〃 /

Gm7/ 〃 / E♭7(#11)/ 〃 /

「数学的」に考えて、きっと前半部分にも何か法則があるのではないか?と思い鍵盤上で試行錯誤していると

「おぉ!」

変則的に見えるものにもちゃんとした法則があったのです。

F#△7

F#m7(add9)=A△7(add6)

Gm7(add9)=B♭△7(add6)

下線の部分は見事に①②③の順に平行移動していることが分かります。

 これらは互いにいわゆる「平行調」の関係になっていることにも気づきます。要するに同じコードを使いながらもベース音を変えて雰囲気を変えているだけなのです。ジョビンの作曲家としての技巧を垣間見た思いです。

 斯界のベテランの人たちから見れば常識なのかもしれませんが、自分で発見したことが嬉しく、ここにシェアさせて頂いた次第です。

 この知識によってアドリブを取ることが本当に容易になるかどうか?はやはり練習次第でしょうが。

石田鍼灸 京都北山 (ishidashinkyu.net)