ジャズピアニストH氏からのアドバイス

 H氏は関西を中心に活躍中のジャズピアニストです。ご本人の承諾をもらっていないので、とりあえず今はイニシャルだけの紹介にとどめておくことにします。

 

ジャズをやっている人というと、個性がきつそうで、中には変わり者も多いのでは?という危惧がないでもないのですが、この人は本当にバランス感覚に優れた人柄の良い方です。

 

以前どう学んでいったらよいのか煮詰まった時に先生から頂いた懇切丁寧なメールがあるので、そこからエッセンスを紹介しておきたいと思います。

 

①最初はまっとうな形に仕上げる、という事にこだわりすぎないほうがいいです。

 

②とにかく最初はⅡⅤフレイズのストックというものがどうしてもある程度は必要になるので、前回の曲で弾いたⅡⅤフレイズを今回の曲に流用するようにしましょう。当面の課題としては、「このコード(Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ)を見たらこのフレイズがすぐに弾ける」というものを少しずつ増やしていく、ということでしょう。

 

③かっこよく聴こえるかどうか、というのは、フレイズの形、音使いによるものよりも、ちょっとしたニュアンスによるところが大きいことの方が多いと思います。
いわゆる「ジャズのアーティキュレーション」というものです。ギターの巨匠ジムホールが生徒を教えるときに、わざとチューニングをめちゃくちゃにしたギターを弾かせる、というのをきいたことがあります。当然音使いはでたらめになりますが、それでもリズム、アーティキュレーションを理解していればちゃんとジャズのテイストが出るものだ、というような話です。
 
④とにかく歌いながら弾く、ということが大切でしょう。それとあまり、複雑な音使いで埋めすぎない、ということでしょうか。
 
⑤アドリブソロの成分は、①ⅡⅤフレイズ、②スペース、③その調性の中でのシンプルで感覚的なメロディが大きなものかと思います。(③はペンタトニック=移動ドでいうドレミソラ、を中心としたすごく単純なメロディが使いやすく有効。)
 
⑥気楽にいろんな曲をやっていく、というスタンスでいいと思います。というか、1、2年かけていろんな曲をやっていくうちに、少しずついろんなことがわかってくるのではないでしょうか。ジャズのアドリブって、なんというか、メカニズムがはっきりした形で見えないところがあって、習得のプロセスもちょっとつかみどころがないところがあるように思います。でも、飽きずにやっていくうちに、自分の中に蓄えられた断片同士があるときすっとつながって、ジャズに必要な回路ができあがっていくというかんじがあると思います。今、この練習をすればこの回路ができる、というように「練習→成果」の図式がはっきりしないのが、アドリブ習得の特徴だといえるかもしれません。
 
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 …どうでしょうか。ジャズはやり始めてもじきに絶壁にぶち当たり、難しくて断念してしまう人が少なくありません。私もそのために長いブランクがありました。しかし、上記のアドバイスを聞くと、諦めずにまた続けて行こう!という勇気が湧いてきます。
 

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 妻の実家に眠っていたカワイのピアノを完全修理して我が家へ引き取り一年余り。