福井県の魅力満喫🌸Part3 【鯖江市 伊藤柏翠俳句記念館】

 メガネの町として有名な福井県鯖江市にある「メガネミュージアム」。その近くにひっそりとある俳句の記念館を訪れてみました。昨年放送のテレビ番組「NHK俳句」にて、結核で夭折した俳人「森田愛子」が紹介された際に登場した記念館です。

 その番組には、こちらの館長の山岸世詩明さんも出演されていました。山岸さんはその昔、NHKで放送された「俳句王国」という番組に俳人 藤田湘子(ふじたしょうし・故人)と一緒に出演されたりしたこともある、この道七十年のキャリアをお持ちの方なのです。かねてより「福井に行くならここは一度行ってみなければ!」と思っていた場所です。

入り口に句碑があります

 行ってみると記念館というよりとても立派な一般の邸宅でした。すでに日も傾き、ご迷惑かなと思いつつも、せっかく来たのだから、と意を決して訪問してみました。声をかけてもどなたの返事も無く、帰りかけようとした時、年配の男性が帰って来られました。お年は召しておられますが、すごく快活な印象の方です。「今から拝観しても構いませんか」とお尋ねすると「どうぞどうぞ」という快いお返事。この方が山岸さんでした。

 中に入ってみて驚きました。実に様々な俳句の歴史に関わる資料がところ狭しと展示されているのです。正岡子規の後を継いで近代日本の俳句の祖となった高浜虚子や、その愛弟子であった伊藤柏翠とその内縁の妻・森田愛子にまつわる貴重な品々です。

 お二人とも結核を患っていたため、明日の命も分からない互いの身の上を熟慮し、愛し合いながらも婚姻という通俗的な手段を避けたとのことです。これは二人の師である高浜虚子の助言による苦渋の決意であったと伺いました。

 他にも、山岸さんのもとに集まった著名な俳人の手による数々の掛け軸や色紙の類でが展示されていました。その一つひとつを懇切丁寧に説明して下さり、俳句歴わずか五年の私はただただ感心するばかり。時間が経つのも忘れていました。

俳句にまつわる様々な資料が展示されています

左から森田愛子、伊藤柏翠、高浜虚子

 

森田愛子に関する書籍、ほか

様々な資料を熱心にご説明下さいました

句会の日にはこの和室が人でいっぱいになるそうです

 色々なことを教えて頂き、毎月句会を催されるというお座敷にも上げて頂き、お茶まで頂戴してしまいました。気が付くと二時間が経ち、すっかり日も暮れていました。「また参ります」とお約束しておいとましました。夜の歩道まで見送りに出て下さいました。

 帰り際に「これを一冊進呈します」と言って頂いたのが製本されたばかりの福井県俳句作家協会刊『令和四年板 年刊句集 福井県 第六十一集』でした。帰宅してから一句ずつ読ませて頂いています。巻頭には会長の山岸さんの十句が並んでいます。

 

 その中から私の好きな一句

 昭和本発禁ものに紙魚走る  山岸世詩明 

紙魚は「しみ」と読みます。紙を食べる小さな虫のことです。)

 俳諧諧謔(かいぎゃく=ユーモア)のある楽しい作品だと思います。

(山岸さんご本人よりお写真のブログ掲載許可は頂いています)

石田鍼灸 京都北山 (ishidashinkyu.net)