東洋医学の研修会で上京した折、上野の通称「トーハク」で開催中の特別展「はにわ」へ行ってきました。以前より日本各地の小さな古墳巡り(畿内、東海、北九州、北陸などをオフロードバイクで走り回る)を楽しんできた私ですが、そこから発掘される出土品、その中でも古墳時代後期の古墳から出土する人物埴輪や動物埴輪にとりわけ親しみを持っていました。
自分の住む京都もお寺だらけで、あたかも太古の昔から日本は仏教国であるような錯覚を持ってしまいますが、実際はそうではありません。仏教伝来以前の日本人の最後の姿を古墳や埴輪に見ることができるのです。そんな私は、これぞとばかりに張り切って秋晴れの上野公園へ出かけて行ったのでした。
開催初日、「古墳とか埴輪とかいう〈けったいな趣味〉を持っている人なんかそんなにいるはずはない、今日は空いているからゆっくりのんびり観られるぞ」と思っていた自分の甘さを知りました。朝方からすでに相当数の観覧者であふれかえっていたのです。
特に混雑を極めていたのは二階のミュージアムショップでした。展示品を観るよりもまず、「お土産をゲットしなくっちゃ」という人たちの長蛇の列が二重にも三重にもなって続いているのを見た時の違和感と言ったら!グッズの「売り切れ」を恐れて展示を観るより先にそちらの列に並ぶのも理解できます。マスコット人形やぬいぐるみ、各種カワイイ系グッズが飛ぶように売れていました。私は予算を考えながら、クリアファイルとピンバッジと缶入りキャンディと新書と雑誌を一冊ずつ買いました。上製本の図録はお値段も立派すぎて手を出しませんでした。
必要最小限の買い物を済ませ、気を取り直して本題の展示コーナーへ。薄暗い空間には日本各地から、一部海外からも集められた数百点の埴輪がガラスケースの中に整然と陳列されており、その様は壮観でさえありました。その中には雑誌やテレビでしかお目にかかったことのない「スターはにわ」もありました。それらは切手やファンシーグッズ、あるいは大映映画「大魔神」のモデルとして誰しも一度は目にしたことのあるもので、多くは国宝や重要文化財に指定されています。
観覧中にふと前を見ると館長か学術部長かと思しきスーツ姿の学者然とした男性二人から逐一説明を受けながら熱心に見ておられるセレブ風の年配の女性がおられました。年配といってもカジュアルで若々しい印象です。一体どこのお方であろうか、と思ってそれとなく横顔を見てみましたら、昭和生まれの人なら誰でも知っている有名な女優さんでした。番組の取材か、プライベートかは分かりませんが、とても熱心にご覧の様子でした。イメージが埴輪とつながらずとても意外でしたが、同時にすごく親しみを感じました。「人は見かけによらないものだ」と妙な感心をして出て行かれる三人の後ろ姿を見送っていました。
12月8日までの特別展、首都圏へ行かれる折にはぜひ足を運んでみてください。