鍼灸治療と首周辺の柔らかさの診察の大切さについて

 私の鍼灸治療では、四診(望診・聞診・問診・切診)を重視するのは当然ですが、首周辺の柔らかさ、硬さを診察することもとても重視しています。これは頸椎(けいつい)の全面、側面、後面の状態を診る、と言い換えてもいいでしょう。

 

  全身の状態を表わす重要な経穴(ツボ)がこの細い首の周りに集まっているのです。もちろん、首こり、肩こり、頭痛など、首から上の症状の反応も現われるのですが、それだけでなく、腰痛や胃腸障害など、全身のすべてのコンディションの異常が現われてきます。それだけに、欠かすことのできない診察ポイントなのです。

 

 頸椎周辺を圧迫した時に出る痛み(圧痛 「あっつう」)のことは、西洋医学医の父が長年の臨床経験から得た見識からの影響もあり、私も二十年以上前から認識してはいましたが、鍼灸治療のための診察診断法としての実際的な運用法としては、よく分からずじまいでした。

 

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 そこへ数年前、偶然の機会に出会った木戸正雄先生の『変動経絡検索法』(通称 VAMFIT)によって、より確実に、かつより深い考察へと導かれるものとなりました。臨床的にもおおいに役立っています。その後も木戸先生には大きな影響を受けており、数年間ご著書を読んで独学した後、昨年から年に五回の東京の勉強会にも参加させて頂いています。

 

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 この首周りを圧迫した時に患者さんが感じる痛みをどう説明するかですが、私は経絡(けいらく)という東洋医学的な言葉で説明するよりも、「交感神経」あるいは「自律神経」という語で解説する方が一般の患者さんには分かりやすいと思い、私は日常の臨床ではそのように言っています。

 

 「自律神経」という言葉はどなたでも知っておられるので、ピンと来るようです。ただ、ほとんどの人は、「自律神経=メンタルな異常に起因するもの」とだけ考えておられるようです。自律神経は決してメンタルなものだけに限定されて異常を起こすものではなく、気候変動や肉体労働などによる広い意味での疲労からも容易に異常を起こします。そうなると、元来自動的に調整されていた身体のあらゆる機能がおかしくなります。この種の身体の調整不良を、薬物を使わずに整える最良の方法の一つとして、古来、鍼灸というものがあるのです。

 

石田鍼灸 京都北山